桜のつぼみ 3月14日
夜7時半の、帰り道。
何も言うことをきかないでっかいプードルを引っ張る世田谷レディがいて、ひとりで笑ってしまった。洗練の権化のような服に身を包んだ女の人。
お寺の横を通るとき、目をつぶさにして桜の花を見つけようとしたけれど、まだ咲いてはいなかった。今日の昼間は汗ばみそうなくらい暖かくて、朝眺めたときと比べても、つぼみが膨らんだ感じがした。
昔から、夜空の星をようく見ようと目を凝らすとき、イヤフォンを外す癖がある。夜空のしんとした音に耳を澄ませるように。後日になってから、星は歌っていることが発見されたというニュースを見たとき、何千光年も先から歌いかける星の声を聞こうとしていたのかしらと思った。
さっき桜の花を探して注意深くつぼみを見ていた時も、やっぱり無意識にイヤフォンを取ろうとしていた。
星や、花は、聞こえないけれど歌っているのかしら。